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「メビウス」 ジャン・ジローのこと

ジャン・ジロー『ブルーベリー』(原作:シャルリエ)の主人公・ブルーベリーを描きました↓
Blueberry

Moebius, Jean Giraud
去る3月10日、フランスの世界的なBD作家、「メビウス」こと ジャン・ジロー氏が亡くなられました。
73歳でした。
[BD(ベデ)とは、「Bande Dessinée(バンド・デシネ)」の略で、
 フランス、ベルギーを中心としたヨーロッパ圏の漫画のことです]
以下は、彼のある作品についての個人的な雑感です。

メビウスのことはご存知の方も多いと思います。
その自在な画風と数々の挑戦的な作品で、
日本でも、数え切れない漫画家に直接&間接的な影響を与えています。
ここでは解説しませんが、メビウスの存在がなければ、
いまの日本の漫画表現がまったく違うものになっていたであろうことは、間違いない
と、わたしは確信しています。
わたしも例にもれず、彼の絵を愛し、大きく影響されました。
(どこが……?とは言わないでね ^_^;)

多くの絵描きが「神」という言葉でメビウスを表現します。
彼の絵は、その描線の自由さと色彩の開放感で、見る者を魅了します。
BDにも流行り廃りはもちろんあり、彼の絵はいまの「トレンド」ではないかもしれませんが、
時代を超越した、普遍的な魅力を備えていると感じます。
メビウスの絵はこれからも変わらず愛され続けるでしょう。

ところで、メビウスにはもうひとつ別の「名」と「絵」があります。
彼は「ジャン・ジロー」という名で 『ブルーベリー Blueberry』 というBDを描き続けてきました。
これは原作付きの西部劇で、「メビウス」というペンネームを使用する以前から手がけていたものです。
そもそも、「ジャン・ジロー」が彼の本名なのです。
 (ところで、主人公のブルーベリー中尉は、↑上の絵のようにブサメンです。
 ベルモンドとかブロンソンとかがヒーローたりえた時代なのですね。 わたしは好きですが!)
こちらの絵はいわゆる「劇画調」で、筆を用いた古典的・重厚な画風です。
今となっては古臭く、何世代も前の時代を感じさせる絵柄かもしれません。
『ブルーベリー』は人気作品でしたが、ジロー自身がその内容と画風に不自由さを覚えるようになり、
「メビウス」名義で、SF等の新しいスタイルの作品を発表し始めたのです。

しかし、わたしはこの絵が大好きでした。
いや、大好きです。 いまも。
意識的に自分の絵に取り入れた、という意味では「メビウス名義作品」以上の存在です。
なにしろ40年間も(!)描き続けられた作品なので、画風もどんどん変化していきますが、
基本的にはリアリティを重視した、迫力のあるスタイルです。

実は、『解剖医ハンター』を描くにあたって、わたしの念頭にあったのはこの『ブルーベリー』でした。
「18世紀ロンドンの解剖医」という時代物へのアプローチとして、
『ブルーベリー』の画風・雰囲気・テンポを大いに参考にしました。
他にも、「一ノ関圭氏・御厨さと美氏」等の70-80年代劇画作品も取り入れました。
 (↑……って、いつの時代の人間なのよ……われながら(・_・))
個人的趣味といえば、趣味ですが……。
ただ、それは一面で「いかに最低限のページ数で物語を魅力的に描くか」という
実際的な必要に迫られての選択でもありました。
そして、「この作風にはいまの時代にも通用する普遍性があるはず」という、
わたしなりの漫画家としての挑戦であり、実験でした。
そのくらい、ジャン・ジロー『ブルーベリー』は、わたしの中の大きな道標だったのです。

『ブルーベリー』はなんと近々、日本語版の出版予定もあるそうで、今から楽しみです。
(あ、わたしはフランス語・カラキシ読めませんので、『ブルーベリー』も原書の絵を眺めて、
 内容を想像して楽しんでいるだけです!(*^_^*))


いま、『解剖医ハンター』の終了と、ジャン・ジローの死が時期的に連続し、
わたしの中で重い区切りが付いてしまったような……そんな心地です。

メビウス=ジャン・ジローはわたしにとって、はるかに遠い夢まぼろしのような存在です。
「神」というよりは、「異星の蜃気楼」とでもいう方がしっくりときます。
亡くなられたことはもちろんショックでしたし、悲しむ気持ちもありますが、
わたしにはあまりに遠く、現実感がありません。
追悼の言葉を連ねることも、なにか違うように思えて、やめました。
ただ、ひとつだけ。
わたしの絵も作風も、今後どれだけ変化し続けていこうと、
その描線のどこかでジャン・ジローの幻を追い続けていくでしょう。
それは間違いありません。

いままで、そして、これからも。ありがとう、ジャン・ジロー先生。

↓日本語版メビウス作品
 一番のおすすめは『アンカル』です。原作ホドロフスキーのストーリーも魅力的!
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Nao Kurogama(Manga Artist,Storyteller)
マンガ家です。兵庫県神戸市在住。
『魔女のやさしい葬列』連載中(月刊COMICリュウ)
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